【ドラゴンボール考察 少年悟空時代の戦闘概念】

<「本気を出す」とは>

−1−

「本気を出す」とはなにか。
作品全体から「本気」とは、戦闘力や気の強さをさらに引き上げていくことだという印象を受けます。

いくつか例を上げていきます。

第2セルが超1−2ベジータに対して本気を出す場面。

セル「本気にさせたいようだな・・・・・・・・・。このわたしを・・・」
ベジータ「とっくに本気だと思っていたがな・・・・・・・・・。そういうことなら遠慮なくやってくれ」
セル「・・・・・・・・・ふふ・・・・・・・・・」

[かまえをとるセル]

セル「はああああ・・・・・・・・・!!!!」

[セルがフルパワーになる]

セル「はああ・・・・・・」
ベジータ「ほう。かなりの戦闘力の飛躍だ・・・。だがそれがどうした?」


復活前セルが超2悟飯に対して本気を出す場面。

セル「では見せてやるぞ・・・・・・!このセルの恐ろしい真のパワーを・・・!!」
「かああああ・・・・・・!!!」

−中略−

[セルがフルパワーになる]

セル「はああああ・・・・・・・・・・・・」

セル「どうだ・・・。これが本気になったわたしだ・・・」
悟飯「それがどうした」


セルゲームで悟空がフルパワーを開放した場面。

悟空「よし!!」

トランクス「(悟空さんの目つきがかわった!!!)」

セル「(フルパワーでくるな)」

[悟空がフルパワーを開放して、周囲に爆風が吹き荒れる]

ベジータ「(こ・・・これが今のあいつの・・・真のパワーか・・・・・・)」
トランクス「す・・・すごい・・・。やっぱり悟空さんはとてつもなくすごい・・・」


第2フリーザが逆上悟飯にうちのめされてさらに力を引き上げていく場面。

悟飯「ま・・・まさか・・・き・・・気の力がもっと強くなっていく・・・!」
ベジータ「こ・・・こんなことが・・・ヤツが戦闘力をコントロールできるとは・・・!!」


第2フリーザがピッコロ(重装備着用)に劣勢に追い込まれて本気を出し、いきなり連続攻撃を浴びせた末に地面に叩きつけた場面。

フリーザ「くっくっく・・・。さっきは悪かったな。キサマをなめてたんだ。だが想像以上にできるんでな。実力を見せることにした。実力をな・・・」

ベジータ「(あ・・・あいつのパワーは底なしだ・・・。オ・・・オレはあんなバケモノと闘うつもりでいたのか・・・)」


悟空とフリーザが序盤のウォーミングアップを終えた場面。

フリーザ「しつこいヤツだね・・・さすがにちょっとムッときたよ・・・」
悟空「オラもだ・・・」
フリーザ「くっくっくっ・・・ウォーミングアップもこのぐらいにして、そろそろその気になろうかな・・・」
悟空「オラもだ・・・」


これらはいずれも戦闘力をさらに引き上げて、さらにパワーやスピードをアップさせるという特徴があります。

また戦闘力数値の変化がないものの、同様の本気の出し方として以下のものがあります。

地球来襲ベジータが本気を出した場面。

ベジータ「ではこのオレがキサマの死に土産に見せてやろう・・・。超エリートサイヤ人の圧倒的パワーを・・・!」
「は――――っ!!!」

[ベジータが力を込め始める]
《ズゴゴゴゴゴゴ・・・・・・》

悟空「な・・・なんて気だ・・・!!ま・・・まるで地球全体が揺れてるみてえだ・・・!!」


続いてナメック星で第1フリーザが本気を出した場面。

フリーザ「くっくっく・・・・・・。なにを言い出すかと思えば・・・。どうやらわたしの恐ろしさを忘れてしまったようだな・・・。思い出させてやるぞ!!!!」

[フリーザが力を込め始める]
《グゴゴゴゴゴ・・・》

ベジータ「・・・ぐ・・・・・・」
悟飯「そ・・・そそ・・・そんな・・・・・・」
クリリン「あ・・・あ・・・あいつ・・・・・・。こ・・・ここまでものすごいとは・・・・・・」

[空を飛んでフリーザとの決戦場に向かっていくピッコロ] ※ネイルと出会う前

ピッコロ「でかい気がさらにバカでかくなった!!いよいよフリーザってのが動き出したか!!」

――中略――

[フリーザが力を込め終わる]
《シュウウ・・》

悟飯「・・・・・・」(ガタガタと震える悟飯)
クリリン「な・・・な・・・なんて気だ・・・。か・・・勝てるわけ・・・な・・・ないぜ・・・・・・」


これらも気を強くしてパワーやスピードをさらにアップさせるという共通性があります。



−2−

「本気」とは気の強さがさらに引き上がるものです。
しかし考察を進めていくうちに、このような「本気」の解釈は、物語全般に適応されるものではないという結論にたどりつきました。

なぜならここまで例に上げた本気とは、作品の性質が戦闘力バトル漫画になって以降になじむもので、戦闘力的な上昇がない中での戦闘技術向上による成長が目立つ初期のころのストーリーには必ずしも適応しないからです。

その1つが第22回大会で悟空が見せた「試合用パワー → 戦闘用パワー」という本気の引き上げ方です。
以前はこれをさらに気が強くなってパワーやスピードがアップする性質のものだと解釈していました。
しかし現在は、気の強さに変化がない中で、ありとあらゆる手持ちの技を出し尽くすといった性質のものだと解釈しています。

野球で例えると、これまでストレートとカーブだけを投げてきたピッチャーが、その投球技術に加えてフォークボールという切り札を出してくるような本気の出し方。
柔道で例えると、トーナメント大会で準決勝までは「背負い投げ」と「足払い」だけで闘ってきた選手が、決勝戦ではさらに「内股」や「腕挫十字固め」も合わせて使い出してくるような本気の出し方。
このようなものにあたります。


なぜ悟空の試合用パワーから戦闘用パワーへの切り替えが、さらなる気の引き上げではないと判断するのか。
ここで考えたいのがクリリンを倒した「消える攻撃」という技についてです。
この技は猛烈なスピードで左右に反復ダッシュを繰り返しながら徐々に相手に近づいていくというものです。
そしてもし戦闘用パワーが気の強さと共にパワーやスピードがアップするというものなら、試合用パワーの時に天津飯に通用しなかった「消える攻撃」は、戦闘用パワーに切り替えたことでさらなるスピード技に変化することになるからです。
しかし戦闘用パワーに切り替えても「消える攻撃」が再び使われることはありませんでした。
これは戦闘用パワーに切り替えたからといって「消える攻撃」がさらなるスピード技に変化するということではないからだと推測します。



−3−

これと同様の考え方ができるのが、天津飯とジャッキー・チュンの本気の意味合いです。

天津飯がジャッキー・チュン戦で太陽拳を繰り出す直前の場面。

▽天津飯
「よかろう。ほんの少しだけ本気で相手をしてやるぜ・・・・・・!」

これはどのような意味なのか。
この言葉通り、天津飯にとっての太陽拳の使用とは、本気度を引き上げるものです。
では太陽拳の使用前から使用後にかけて、天津飯の気の強さはさらに上がったのか。
これは変化していないのではないかと思う。
太陽拳で相手の目をくらませて一気に勝負を決めにいくという行動自体が、天津飯にとっての本気度の引き上げだったと解釈します。

そして天津飯にとってのジャッキー・チュン戦で見せなかったさらなる本気とは、「排球拳」「四妖拳」「気功砲」に代表される、さらなる技の隠し持ちではないかと思う。


またジャッキー・チュンがわざと場外負けになって武舞台を去っていく場面。

天津飯「なぜだっ!!なぜわざと負けるんだっ!!」

鶴仙人「なあに!まともに闘って負けるのがなさけなくてイヤだっただけじゃ!ひきょう者じゃい」

天津飯「(ちがう・・・。あいつはまだ全力を出し切っていなかった・・・・・・)」


このジャッキー・チュンも天津飯戦では本気を出し切っていなかったという意味。
これもその気になればさらに気の強さを引き上げて、さらなるパワーやスピードで闘える余裕があったというものではなく、まだ全ての技を出し切っていなかったという意味だと解釈します。

天津飯とジャッキー・チュンも戦闘力的にはほぼ同格で、この試合の中で繰り出された動作自体は全力が出ていたと考えられます。

2人の序盤の攻防が終わった場面で悟空が「すげえ試合だ・・・」と驚いていたのも、その見方によってしっくりくるものではないかと思う。



−4−

この力関係がよりわかりやすく示されているものとして、アニメ版のバトル(オリジナル部分)があります。

序盤の攻防が終わって、それに続くバトル。

天津飯がジャッキー・チュンを場外付近の武舞台のはしまでふっとばす。
起き上がったジャッキー・チュンを天津飯が一気に場外に押し出そうと両手を前に突き出して襲いかかる。
その天津飯の両手をジャッキー・チュンは自らの脇ではさみ、両肘を前に曲げて両手を組み、さらに力を入れて天津飯の腕を強く締めつける(はさみつける)。
叫び声を上げて痛がる天津飯だが、後数歩で場外に落ちる位置にいるジャッキー・チュンをその体制のまま押し出しにいく。
かかとの一部が武舞台からはみでて後がなくなったジャッキー・チュンだが、これ以上は後退せずに必死でふんばる。
天津飯は連続して頭突きを放って場外に落とそうとする。
シャッキー・チュンはエビのように背中を後にのけぞらせ、その反動で強烈な頭突きをお返ししてピンチを脱出する。
汗をかきながら息切れをしている天津飯とジャッキー・チュン。

以上の戦闘内容です。

この直後に天津飯の「よかろう。ほんの少しだけ本気で相手をしてやるぜ・・・・・・!」という発言が飛び出し、太陽拳で目をくらませて一気にダウンを奪うという展開に続きます。

この一連の天津飯とジャッキー・チュンの生々しい痛みが伝わってくるようなバトル内容。
これはお互いがその動作を繰り出す上では、全力が出ている描写とみていいのではないかと思う。
これらも天津飯とジャッキー・チュンが、戦闘力的にはほぼ同格という見方につながるものになります。




−5−

天津飯とジャッキー・チュンは戦闘力的には同格。
よって悟空(戦闘用パワー)とジャッキー・チュンも戦闘力的には同格となります。
3年前の悟空(超神水パワーアップ後)と亀仙人が戦闘力的には同格で、両者のそれからの成長が戦闘力的に変化がない中での戦闘技術の向上にあるという見方につながるものです。

ここで見ていきたいのが、両者の多重残像拳です。

ジャッキー・チュンが天津飯戦で見せた多重残像拳は8人。
そして悟空が決勝戦で見せた多重残像拳も天津飯を囲む輪の軌道上だけで8〜9人と判断されるものです。
(コマの中に映っているのは7人だが、やや狭い長方形のコマ枠のため、そこからはみ出た部分にもう1〜2人いるのではないかと思わせる描写のため)。

この残像数から、悟空とジャッキー・チュンの多重残像拳は、ほぼ同水準のスピード技とみていいのではないかと判断します。
では悟空の多重残像拳の優れた点はどこかというと、「裏の裏のそのまた裏」といった何重にも罠をはっていたところではないかと思う。

天津飯が悟空の多重残像拳を見た時の
「おろかなっ!!いまさらこのオレに残像拳など!!」
という反応。

これも、すでにジャッキー・チュン戦で攻略済みの多重残像拳と同じものが、今さら自分に通用するわけがない といった意味ではないかと判断します。




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